メディアで度々話題となっている「フードロス」や「食品ロス」。
ただ、これらの言葉を聞いたことはあるものの、詳しくは知らないという人も多いのではないでしょうか。
フードロス・食品ロスは世界中で問題視されており、一人ひとりが削減への意識を高めることが求められます。
そこで、この記事ではフードロスの意味や政府・企業などによる取り組み、私たちが削減に向けてできる日常での対策や支援方法について解説します。
フードロスとは?
そもそもフードロスとはどのようなものなのか、意味や似た言葉である食品廃棄との違いについても見ていきましょう。
フードロスとは
フードロスとは、本当は食べられる食品であるにも関わらず、捨てられてしまうものをいいます。
ほとんどの場合は「食品ロス」と同じ意味合いで使われます。
日本では多くの食べ物が生産されていますが、そのすべてが消費されるわけではありません。
日本は飽食の状態にあり、さまざまな事情で廃棄されてしまう食べ物も多くあるのです。
食品廃棄との違い
フードロスと似ている言葉に「食品廃棄」がありますが、厳密には意味が異なります。
たとえば、骨付き肉を食べるとします。
その際、骨は食べずにそのまま残し、生ゴミとして捨てることが一般的ではないでしょうか。
このように、基本的には「食用とならない部分」を捨てることは食品廃棄となります。
フルーツの種や芯なども同様です。
こうした食品廃棄のうち、本来は食べられる部分を捨てたり、食べ残したりすることをフードロスといいます。
国によるフードロスの定義の違い
日本では一般的にフードロスや食品ロスという言葉が使われていますが、外国では表現が異なることがあります。
具体例を挙げると、国際連合食糧農業機関(FAO)では「Food Loss and Food Waste」という言葉が用いられています。
海外における「フードロス」は消費者に届くまでの間に発生する損失という意味合いが強く、消費者による廃棄は「フードウェイスト」と区別されているのです。
日本とはやや定義や表現が異なっている点に注意しましょう。
新型コロナウイルスによるフードロスへの影響
世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスは、フードロスにも大きな影響を与えました。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、外出自粛や各種イベントの延期、飲食店の時短営業命令といった事態が発生しました。
その結果、観光業や飲食業に人が流れなくなり、食材の需要も減っていったのです。
さらに、休校措置をとる学校が増加したことで給食の中止が相次ぎ、食品ロスを招く結果となりました。
長期保存ができない食品は、そのまま廃棄せざるを得ません。
このように、情勢によって食品ロスはいたるところで広まり、多くの食材が行き場をなくしてしまうのです。
世界と日本のフードロスの現状
世界と日本におけるフードロスはどのような状況にあるのでしょうか。それぞれ確認していきましょう。
世界のフードロス事情
国際連合食糧農業機関(FAO)による「世界の食品ロスと食料廃棄(2011年)」の報告書によると、世界では年間約13億トンもの食べ物が廃棄されているというデータがあります。
先進国と開発途上国のどちらにもフードロスは発生していますが、その理由には違いがみられます。
先進国は消費の段階で多くの廃棄が出る一方、開発途上国は市場に出回る前の段階でフードロスが発生しやすい傾向にあるのです。
なぜなら、開発途上国は食料の貯蔵や輸送といった、インフラに必要な技術や予算が不足していることが多いためです。
食べ物を作っても収穫できなかったり、保存設備や加工施設の状態が整っておらず消費者の手に渡る前に傷んだりするケースも多くみられます。
このような理由でやむを得ず食べ物が破棄され、無駄になってしまっているのが現状です。
日本のフードロス事情
農林水産省・環境省が発表した「平成29年度推計」によると、日本では1年間で約612万トンもの食料が捨てられているとされています。
ただ、612万トンという数字を見ても、なかなかイメージがつかみにくいですよね。
これをわかりやすい例にすると、東京ドーム5杯分とほとんど同量になります。
おおまかに計算すると、日本人一人あたり、毎日お茶碗1杯分のごはんの量が捨てられていることになるのです。
このように、身近なものに置き換えてみると、いかに食べ物がもったいない末路を辿っているのかが鮮明になります。
なぜフードロスが問題となっているのか
フードロスは世界中の大きな課題となっています。
なぜ、ここまでフードロスが問題視されているのでしょうか。
それは、フードロスがただ食糧資源の無駄になるだけではなく、さまざまな影響や問題につながると考えられているためです。
では具体的にどのような影響や問題があるのか、見ていきましょう。
環境への負荷がかかる
フードロスによる問題の一つが、環境への負荷です。
廃棄した大量の食べ物を処分するには、当然それだけの燃料や資源が使われることになります。
廃棄した食品を燃やすことで大量の二酸化炭素が排出され、その後の灰の埋め立てといった環境負荷が懸念されます。
さらに、埋め立てによって土壌や水質への悪影響がおよぶ可能性もあるでしょう。
このように、フードロスは温暖化に寄与する原因の一つとなるのです。
ごみ処理のコストが発生する
廃棄した食べ物を処理するためには大量のエネルギーや資源のほか、多額のコストが発生しています。
その費用の一部には、収めている税金も含まれます。
フードロスは食料だけではなく、貴重な資金まで無駄になってしまうのです。
食の不均衡が起こる
日本は食料を輸入に頼っている反面、その多くを廃棄しているのが現状です。
また、大量に食料を廃棄している一方で、世界では多くの人々が貧困による食料不足に陥っているという食の不均衡が発生しています。
貴重な食料を無駄にしないためにも、私たち一人ひとりがフードロスへの意識を高め、大切に消費する必要があるでしょう。
食品ロスはなぜ発生する?主な原因について
食品ロスは主に
「食品製造過程で発生するもの」
「流通・店舗から発生するもの」
「飲食店・家庭から発生するもの」
の3つに分けられます。
食品ロスはどのようにして発生するのか、それぞれ確認していきましょう。
食品製造過程から発生するフードロス
日本や先進国で多いとされているのが、食品製造過程におけるフードロスです。
日本の消費者は品質や見栄えに対するチェックが厳しいといわれています。
その要求に応えるため、小売店は商品の形・サイズ・重さなど品質や見栄えにもこだわり、高い品質基準を設ける傾向にあるのです。
こうした高い品質基準が設けられたことで、栄養価・安全性・味などに問題がない食品でも、規格外というだけで廃棄されてしまう現状があります。
流通・店舗から発生するフードロス
現代はスーパーやコンビニが建ち並び、消費者の幅広いニーズに応えるため、多種多様な商品が販売されています。
そのおかげで、私たちはいつでも手軽に食品を手に入れられます。
しかし、その便利さの裏で、実はフードロスが発生しているのです。
小売店は棚にいつでも商品が陳列されている状態を維持するために、多くの在庫を抱えています。
とはいえ、その商品のすべてが売れるとは限りません。
販売期限内に売ることができない商品は、やむを得ず廃棄することとなります。
こうした売れ残りがフードロスの大きな原因となっているのです。
家庭・飲食店から発生するフードロス
家庭で発生するフードロスには、大きく分けて3種類あります。
1つ目は「食べ残し」です。
飲食店で注文した食品、家庭の食卓にのぼった食品のうち、食べきれず残して廃棄するものを指します。
2つ目は「直接廃棄」です。
これは賞味期限切れなどの理由によって、未使用のまま廃棄されてしまうものです。
3つ目は「過剰除去」です。
これは本来食べられる部分なのに、過剰に除去し廃棄されているものをいいます。
たとえば、厚くむいてしまった野菜の皮などが該当します。
飲食店におけるフードロスは、消費者側・事業者側のそれぞれの問題によって発生するものです。
主な問題として消費者側は食べ残し、事業者側は食材の仕込みすぎや賞味期限切れなどが挙げられます。
フードロス・食品ロス削減によるメリット
フードロスを削減することによって、どのような効果を期待できるのでしょうか。
フードロス・食品ロス削減によって期待できるメリットには、以下のようなものがあります。
二酸化炭素排出量の削減につなげられる
フードロスを削減することで、食品を焼却するために使うエネルギーの使用量が減ります。
これにより、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を減らせます。
フードロスの削減は、自然環境への配慮にもつながるのです。
食品廃棄にかかるコストをカットできる
廃棄する食品の量が減れば、それだけ処理にかかるコストも削減できます。
その結果、税金をより有意義なことに使えるようになるでしょう。
小売価格の引き下げが期待できる
あまり知られていませんが、実は商品の小売価格には廃棄費用が含まれています。
そのため、廃棄費用が抑えられれば、結果的に小売価格も下がる可能性があるのです。
フードロス削減に向けて私たちが日常生活でできること【買い物・調理編】
フードロスは大きな課題となっており、政府や企業でも削減のためのさまざまな取り組みが進められています。
しかし、フードロス削減のためには、政府や企業だけではなく、私たち一人ひとりの努力が不可欠です。
日常生活で少し配慮するだけでも、十分フードロスの削減につなげられます。
具体的にどのようなことを意識すれば良いのか、日常生活でできる取り組みを紹介します。
ここでは、買い物・調理のときに気を付けたいポイントをチェックしていきましょう。
買い物の前に冷蔵庫や食品庫を確認する
買い物を終えて自宅に戻ったときに「また同じ食材を買ってしまった。。。!」という経験がある人も多いのではないでしょうか。
食材が重複すると、使いきれず余らせてしまう原因になります。
無駄なく食材を使いきるためにも、買い物の前に冷蔵庫や食品庫にある食材をチェックすることがおすすめです。
必要な分だけ購入して食べきる
冷蔵庫を整理していると、霜のついたお肉や賞味期限が数年前に切れた調味料など、いつ購入したのかもわからない食品が出てくることもあるでしょう。
こうした未使用のまま廃棄される食品をなくすことが、フードロス削減のために重要です。
ポイントは安易なまとめ買いは避け、使いきれる分だけ購入することです。
お得だからといって余分に購入すると、結局使いきることができずに食品が無駄になる可能性があります。
安売りに左右されず、必要なときに必要なぶんだけ買うように心がけましょう。
使用する目的と照らし合わせて期限表示をチェックする
コンビニやスーパーなどで買い物をする際、期限が長いものを買おうとして棚の奥から食品を取るクセが身に付いている人もいます。
しかし、その行動をする人が多いと、手前の消費期限や賞味期限が短い食品が売れ残ってしまう可能性があります。
万が一、売れ残ったままになると小売店は返品・廃棄の処分を行わなければならず、食品ロスとなってしまうでしょう。
本来、当日などすぐに使う予定であれば、期限の短い食品でも問題はないはずです。
すぐ使う場合は棚の手前にある、消費期限や賞味期限が短い食品を選ぶと食品ロス削減につなげられます。
何でも棚の奥から食品を取るクセを見直し、なるべく陳列順に購入するよう心がけましょう。
食材の保管場所を決めておく
食材は保管場所を決め、なるべくまとめて置くことがおすすめです。
なぜなら、あちこちに食材を置くと、何があるのか把握しにくくなるためです。
自宅に備えている食品を忘れてしまい、何度も同じ商品を買ったり、賞味期限が切れたりする原因につながります。
置く場所を決めておけば正確な把握に役立つほか、スペースが限定されるため買いすぎ防止にも役立ちます。
無駄な買い物が減り、その分、節約にもつなげられるでしょう。
食材は適切な方法で保存する
冷蔵庫や食品庫など、食材の配置や保存方法を見直してみることも大切です。
食品は見つけやすく取り出しやすいよう収納し、すっきりとした配置を心がけましょう。
加えて、食材ごとの適切な保存方法を知ることもポイントとなります。
食材によって常温・冷暗所、冷蔵・冷凍など、適した保存方法は異なります。
誤った保存方法だと食品の劣化が早まることがあるため要注意です。
食品に記載された方法に従う、もしくはインターネットで情報を検索するなどして、適切な方法で保存しましょう。
食材は下処理をしてストックしておく
野菜は種類によっては劣化が早く、食べきれないものもあるでしょう。
食べきることが難しい野菜は冷凍や乾燥などの下処理を行い、ストックしておくと無駄になりません。
小分け保存をするなど、食材を長くおいしく楽しむための工夫をしてみましょう。
残っている食材から使うよう心がける
食材は古いものから使うことが基本です。
新しく購入した食材から使うと、古い食材がどんどん傷んでしまう可能性があります。
冷蔵庫や食料庫を定期的に整理し、残っている食材から使うよう心がけましょう。
無駄なく食材を使いきる
食品ロスの原因として多いのが、本来食べられる部分まで捨ててしまうことです。
野菜の皮や茎などは食べられないと思ってカットし、捨てている人も少なくありません。
しかし、野菜の皮や芯には栄養やうまみがあるものも多くあります。
調理方法を工夫し、このような部分も無駄なく活用してみましょう。
たとえば、野菜のくずを集めてだしを取ったり、野菜の茎を小さく刻んでスープの具材にしたりするのもおすすめです。
インターネットのレシピサイトを参考にするのも良いでしょう。
料理は作りすぎないようにする
料理は家族の人数を踏まえて、食べきれるぶんだけ作ることが基本です。
体調によっても食べられる量は変わるため、考慮して料理する必要があります。
やむを得ず食べきれなかった料理は冷凍するなど、食品ロスがでないように工夫してみましょう。
残った料理はリメイクやアレンジをすることで、飽きずに楽しむことができます。
失敗しないよう調理に集中する
調理中にテレビを見たり誰かと話していたりすると、つい熱中して料理が失敗してしまうこともあります。
せっかくの食材を無駄にしないためにも、調理に全集中しましょう。
おいしく作れるようにレシピの分量や手順をよく確認するなど、調理技術の上達に励むことも大切です。
フードロス削減に向けて私たちが日常生活でできること【外食・会食編】
フードロス削減のため、家庭内だけではなく外食や会食時にもできることがあります。
外食・会食時に気を付けたいポイントには、以下のようなものが挙げられます。
食品ロス削減に取り組むお店を利用する
なかには食品ロス削減に積極的に取り組むお店もあります。
たとえば、注文したものが食べきれない場合にその料理を持ち帰れる、希望に応じて料理の量を減らせるなどの取り組みです。
こうしたお店を選ぶだけでも、食品ロス削減につなげられます。
食べきれる量を注文する
お腹が空いているときにお店のメニューを見ると、目移りしてあれこれ頼みたくなるものです。
しかし、大量に注文してしまうと食べ残しのリスクが高まります。
料理は勢いで注文するのではなく、自分が責任を持って食べきれる量を考えて頼みましょう。
小食な人は小盛りメニューやハーフサイズなどを選ぶと、食べ残すリスクを減らせます。
料理を味わう時間を設ける
多くの人が集まって会食すると、わいわい盛り上がって会話に夢中になるものです。
しかし、会話が弾むと、その分、食事がおろそかになってしまいます。
料理が運ばれてきた直後は声かけをして、できたての食事を楽しむ時間を設けることもオススメです。
決めた30分間は食事に集中するなど、親睦を深めつつ食事を楽しむ工夫を行いましょう。
会計前に食べきるための声かけをする
会食がお開きとなる前に、食べきりの声かけをすることも大切です。
テーブル上に食べ残した料理がある場合は、積極的にもう一度料理を楽しむよう声かけをしてみましょう。
フードロス削減を応援するための方法は?
フードロスはさまざまな方法で応援することができます。
日常生活でできることに取り組みつつ、下記の方法を試すことでよりフードロス削減に貢献できるでしょう。
フードロス通販サイトを利用する
規格外商品や訳あり商品など、なかには生産者側がやむを得ず廃棄しなければならない食材もあります。
こうしたお店には並ばない品物を、通常よりもリーズナブルな価格で販売する通販サイトがあります。
(自分たちのサイトの宣伝のようで恐縮です)
通販サイトの利用によって、お得に商品を購入しつつ食品の廃棄を減らせます。
お裾分けや寄付をする
自分では使わない贈答品や買いすぎてしまった食品は、そのまま自宅に眠らせておくと廃棄につながります。
こうした食品は近所や知人に声をかけ、積極的にお裾分けすると良いでしょう。
フードバンクに寄付する
フードロス削減のためには、フードバンクに寄付することも良い方法です。
フードバンクとは、包装の破損や規格外など市場に流通できない食品を企業から募り、福祉施設や生活困窮者などに配給する団体とその活動を指します。
基本的にフードバンクは法人からの食品寄付を対象としていますが、一部では個人から受け付けている場合があります。
ただし、受け付けが可能な食材に限りがあるほか、送料や梱包材料などが実費となるケースが多い点に注意が必要です。
寄付を検討する際は、あらかじめホームページで内容をチェックしておきましょう。
フードロス・食品ロスの知識を深める方法は?
フードロス・食品ロスに関する知識はさまざまな方法で深めることができます。
どのような方法があるのかを見ていきましょう。
本や資料を読む
さまざまなメディアやツールでフードロスに関する情報が掲載されています。
たとえば、政府関係省庁のホームページには、消費者向けの食品ロスに関する資料が公開されています。
このようなメディアや資料に目を通すことで、知識を深めることができるでしょう。
動画で学ぶ
楽しく手軽にフードロスについて学びたい場合は、動画配信サイトを利用することもおすすめです。
フードロスに関する動画も多く配信されており、毎日の通勤・通学などの空き時間を有効活用できます。
講座を受講する
自治体によっては、フードロスに関する講座を開催しているケースがあります。
開催される時期や募集人数などは自治体ごとに異なるため、興味のある人はホームページなどでこまめに情報を確認しましょう。
環境省によるフードロス削減への取り組み
環境省では食品ロス削減のための幅広い取り組みを行っています。
具体的な取り組み事例には、以下のようなものがあります。
食品ロス発生量の調査への支援
環境省では平成29年度より「市区町村食品ロス実態調査支援事業」を実施しています。
ゴミ袋開封調査の実施を通じて、フードロス発生量の調査における支援をしています。
食品ロス削減に関する情報発信
環境省ではフードロス削減のため、自治体向けに「自治体職員向け食品ロス削減のための取組マニュアル」を作成しています。
ほかにも、市区町村の教育現場向けに「自治体職員のための学校給食の食べ残しを減らす事業の始め方マニュアル」も提供しています。
これらのマニュアルは各自治体や教育現場で、食品ロス削減のための取り組みに活用することが可能です。
食品ロス削減環境大臣賞の表彰
環境省では「mottECO(モッテコ)」「フードドライブ」「食品ロス削減の取組」の3部門において、食品ロス削減に関して優秀な取り組みを行った人の表彰を行います。
地方自治体によるフードロス削減への取り組み
フードロス削減のため、地方自治体でもさまざまな取り組みが進められています。具体的な事例をいくつか見ていきましょう。
消費者への啓発
各地方自治体では食品ロス削減を目的として、消費者への啓発を実施しています。たとえば、仙台市ではホームページでプロの料理人によるレシピを掲載し、積極的に情報発信を行っています。
また、岡山県では食品ロス削減への理解や関心を高めてもらうための施策として、webサイト上で「岡山県下一斉テスト」を実施しました。
これは食品ロスに関する授業を受け、その後、全10問のテストを受けるというものです。
テストに全問正解した人には、デジタル合格証が与えられます。
抽選でプレゼントがもらえるなど、多くの人に興味を持ってもらえるような工夫が盛り込まれています。
フードバンク・食品関係事業者との連携
食品ロス削減のための取り組みとして、フードバンクや事業者との連携を行っています。
一例として、福岡県では「フードバンク活動支援システム」を開発・運用しています。
これにより食品の寄贈から受取までを電子システムで可視化することに成功しました。
また、埼玉県では事業者と子ども食堂などを直接マッチングし、地域内で食品を有効活用するための「地産地消型食品ロス削減モデル」を構築しています。
各地域でルールを定めてルーティン化し、フードロスになりそうな食品を有効活用しています。
企業・事業者によるフードロス削減への取り組み
食品業界の慣習を見直しつつ、フードロス削減に取り組む企業も多くみられます。
ここでは、企業や事業者が行っているフードロス削減の取り組み事例をいくつか紹介します。
江崎グリコ
江崎グリコでは流通から販売にいたるまで、さまざまな観点からフードロス削減への取り組みを実施しています。
具体的には、流通業への納品期限の見直しや、サプライチェーンの効率化などです。
そのほかにも、フードバンクへの商品寄贈や品質に問題のない不揃い品の販売なども行っています。
山崎製パン
山崎製パンでは、生産活動において発生したものをすべて資源として利用する取り組みを進めています。
たとえば、生産活動でカットした食パンの耳部分はオーブンで焼き、ラスクとして販売しています。
そのほか、カットしたバナナの切れ端は別商品のパウンドケーキに練り込むなど、可食部が無駄にならないよう工夫されているのです。
セブン&アイグループ
セブン&アイグループでは、食品のロスを減らすためにさまざまな施策を講じています。
その一つが「エシカルプロジェクト」です。
セブンーイレブン・ジャパンでは販売期限の近いおにぎり・総菜、パン・スイーツなどの商品に、ボーナスポイントを付与する取り組みを行っています。
また、イトーヨーカドーでは小分けやばら売りなどの品ぞろえを充実させ、食品廃棄の抑制を目指しています。
某牛丼販売チェーン
某牛丼販売チェーンでは、規格外となった牛肉・玉ねぎなどをハンバーグやドレッシングの具材として活用しています。
また、店舗では販売実績や地域のイベントなどの情報をもとに販売数を予測し、なるべく無駄が出ないよう食材を発注しているのです。
食べ残しが発生した場合は残りかすを計量し、顧客ニーズの参考にするなどの取り組みも実施しています。
学校・大学によるフードロスへの取り組み
小学生から大学生まで幅広い年齢層の学生がフードロスに関心をもち、解消のためのアプローチを行っています。
ここでは、その取り組み事例をいくつか見ていきましょう。
神奈川県鎌倉市立小坂小学校
鎌倉市立小坂小学校に通う生徒は、社会科の授業をきっかけに食品ロス削減に興味を持ち、フードロス削減のための取り組みを始めました。
まず始めたのは、給食の残飯量を減らすための「残飯00応援隊」の結成です。学校内に手書きのポスターを掲示するなどの活動を実施しました。
また、地域にも取り組みを広げるため「フードロス00応援隊」を結成し、手書きのポスターや新聞を配布するなど積極的な啓発活動を行っています。
正則学園高等学校・生徒会
東京都千代田区にある正則学園高等学校・生徒会では、食料の大量廃棄を問題だと認識していました。
そのようななか、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって行事のスキー学校が中止となり、宿泊予定だったホテルの食材が大量廃棄される可能性があることを知りました。
そこで、生徒会では行き場を失った食材を引き取り、学校で配布するイベントを実施したのです。
生徒会が中心となってフードロス防止を呼びかけ、学校のエントランスで食材を配布しました。
その結果、開始から50分程度で終了となるなど、必要な人に食材を届けることに成功しています。
京都大学 エコ~るど京大
京都大学の「エコ~るど京大」は、持続可能なキャンパスの実現を目指して学部生・院生・教職員などが活動する団体です。
エコ~るど京大では、食品ロス削減プロジェクトとして「食のバラバラボ」を開始しました。
これは食材をバラバラに分解し、野菜の皮や種などの廃棄されやすい部位の価値や活用方法を追求するというものです。
食の専門知識を有するゲストなどを交えて多角的に研究を行い、レシピの開発を行っています。
誕生したレシピはwebサイトやSNSで公開するなど、食品ロス削減のため積極的に情報を発信しています。
一人ひとりの意識が重要!できることからフードロス・食品ロス削減に取り組もう
フードロス・食品ロスは日常生活に直結する問題であり、世界全体で取り組むべき課題です。
課題解決のためには、政府や企業をはじめ、私たちの日頃の努力が必要です。
たとえば、スーパーで買いすぎないように気を付ける、家庭や飲食店で食べ残しをしないようにするなどの小さなことでも、立派なフードロス対策となります。
今一度日常生活を見直し、できることからフードロス削減に取り組んでいきましょう。